手前共

料理谷邸と商工クラブ

かつての城下町、「古町」と総称される地区、
熊本市中央区の西阿弥陀寺のほぼ中央の六番地、
そこに築百三十有余年を数えるこの「料理谷邸」は構える。

同家の先祖は細川忠利公が豊前小倉藩主から
豊前小倉藩肥後藩主へ封じらせる際に共に小倉から熊本へお供し、
その後も代々細川藩に仕えてきた代々の料理人家系であり、
その「料理谷」という姓も細川公より戴いたものである。

明治に入り料理谷家は「商工クラブ」という料理屋・料理旅館を開業させ
結婚式や宴会など多くの人々の華やかな思い出の舞台として、
時には滾る若者達の社交場として賑々しさを見せていたが、
昭和四十八年、この旧「商工クラブ」は一旦の幕を降ろした。

しかし半世紀の静寂を破り、
料理谷家の想いの元に集った熊本の名工達の手により、
見事に改修・リビルド・再構築されたこの館は、
歴史的価値を熊本市に評価され「歴史的風致形成建造物」の指定を受ける。

そして、2021年6月。
熊本の美食界をリードする料理屋連中が彩る美食の館「商工クラブ」と、
タイムスリップしたような世界観を創出する宿「料理谷邸 葛籠~つゞら~」で織りなす、
「謎めかしい」館として、満を持してここに開宴された。